堀田善衛book

ゴヤⅢ 堀田善衛先生

「ゴヤの叫びはスペインの叫びだ」といった研究者がいたらしいです。
宮廷画家となり、多くの王、王妃、貴族のもとで生活をして頼まれる多くの絵画を仕上げて賛美を得続けてきた大御所、ゴヤ。

また時には近所で親しくなった本屋の奥さんの肖像画に手を染めたり、居酒屋で男たちが飲んで笑っている絵など、純粋な心模様とか皮肉をこめた眼差しを向けるなど好奇心の幅に限りはありません。

ただなんといっても「戦争の惨禍」画集は一枚一枚もさることながら、戦争の悲惨な場面を地面から庶民から活写しており、時にページをめくる手が止まる場面に。もし、昭和の最初の頃、日本人がしっかり見て、光景を目に焼き付けておけば、、、という想いが巡りました。今でも見つめ続けなけれならない作品です。世界とともに。

そしてこのⅢのクライマックスは「五月の二日」「五月の三日」。「ここから、現近代絵画の幕が切って落とされる」といわれる作品です。

「五月の三日」の主人公、白いシャツの男性はいまにも銃殺される、あたかもスペインの希望や自由、栄光が征服欲に満ちた権力の銃声に、暴力に奪われるように感じました。彼はキリストなのかもと。ただそこにひとつの光が。影のようですが、何かを抱いているような女性がおぼろげに描かれているのです。何を訴えたかったのでしょうか。詳しくは本文で。

そして、ゴヤは自由な国を目指してマドリードを出るのです。若い伴侶とともに。そのとき68歳。いずこへ。次です。さあご一緒に旅を。

タイトルとURLをコピーしました