実直で寡黙な店主の店へ。11時開店14時閉店とのことで9時10分についてみたら5番目。ほぼ2時間です。
失礼がないようにメニューを考えます。10時55分に待望の暖簾が。
みなさん軽い挨拶とともにお店へ。右に製麺室。左の券売機で選びます。「新塩らーめん」「味玉」1250円。ポチリ。軽快な音でチケットが発行となります。買えました。先の方は店主にチケットを回収しています。席はカウンター8席。4杯ごとに作るようです。みんな無言で待ちます。オープンキッチン。作るほう食べるほうお互いに見られます。
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店主にチケットを渡しながら、麺の量を申告です。並は250g、中は350g。並にしましたが、同じタイミングの漢たちは「中」。みな胃袋自慢です。メガネの実直なイメージの方が店主。若い。ご自身で打った麺をもみほぐし鍋に入れます。その間、ドンブリを4つずつ並べます。順番はネギ、塩、タレを丼に入れ、まな板前へ移動。チャーシューを切る。力強い包丁なのか、周りのドンブリがカタカタざわつきます。
そのあとスープを順番に入れ、麺をあげ、ドンブリへ。ここで店主、スープの味を自前レンゲでチェック。合格なら太い箸で麺をドンブリの中で往復させ折り畳みます。この「としおかターン」が芸術的。飽きません。所作が求道的。余計なBGMも不要です。約10分でご対麺です。
「濃かったり薄かったりしたら言ってください」店主の声が聞けた。やさしいじゃないの。ありがたいじゃないの。
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返事をしていただきます。スープから。おっ塩だ塩。目の前に塩の壁がたちはだかるようです。頑固だ、厚い、高い。塩の主張です。強いです。旨いです。かわりにメンマが甘みをくれます。
麺は中太、柔らか。スープをしっかり持ってきており、麺をすするだけで自家製中華そばをあますところなく楽しめます。さらに嬉しいのがチャーシュー。さっきの力強い包丁のワケはこの分厚いチャーシューか。一枚ながら存在感しっかり。見た目も食べ応えも十分。ここにいる漢たちが心の中でナミダしているはず。泣けない代わりにこだます漢たちのすすり。
ジャンルは違えど、銀座のジャポネに通じるモノがあります。
「中」が多い理由がわかりました。だっていつまでも啜っていたい。という願望がそうさせるんですね。麺類よ永遠なれ。まだまだ麺道は続く。この寡黙な店主とともに。
フィンランドのアキ・カウリスマキのフィルムのような静謐さ。会話はいりません。啜る音だけがこだまして。
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