堀田善衛book

ゴヤⅠ 堀田善衛先生のスペイン

実際にスペインに住んで、徹底的に見て感じて調べて聞いて取材して回った先生のゴヤの評伝です。

スペインについてこんなにくわしい本はいままで読んだことがなかったのでページをめくるのが楽しみでした。

フランスやイタリアの陰に隠れて、いつも彼らの影を追うことを余儀なくされたスペイン。読んでいてヨーロッパを理解する上ではなくてはならない国となりました。

ゴヤの生まれたサラゴサには住民代表議会があって、1163年に創設され、1283年には絶対王権は認めないと宣言している。イギリス・ジョン王のマグナカルタ、1215年よりはやく民主的な制度をもっていたのです。独裁制のイメージが強かったスペインをよく理解してませんでした。

トレドはギリシア・ローマの偉大なる賢人たちの「哲学」がイスラムへ渡ってしまったとき、アラブ語に訳されていた貴重な文献をラテン語により戻して翻訳し、やがてのルネッサンスの基礎を作った街として重要な役割を果たした。このエピソードだけでもスペインの「知」と「好奇心」が理解できます。

ある内容では、
「キリスト教はローマに近づけば、近づくほど邪悪になる。」
「ローマは広く浅い人間の町ですから、かれらは互いに仮面をはがしあい、絶えずいがみ合っている。」

いかなる宗教に翻弄されていても、強大な権力をはすに見る冷静さを持ちあわせていた国です。

ゴヤについては、本書で紹介される数枚の「自画像」がその時々のゴヤの芸術界の立ち位置、羽振りだけでなく勢いとか心持ちとか、感情を理解するのに役立ちました。Ⅱへの扉をワクワクして開けたいと思います。

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