角川ソフィア文庫で「百人一首」を読みました。
音やリズムの素晴らしさに惹かれ、ときどき声に出しながら読みました。
ひとつご紹介します。
音に聞く高師の浜のあだ波はかけじや袖のぬれもこそすれ 祐子内親王家紀伊
袖が濡れては困るので、いたずらに波をかけるつもりはありません。浮気なあなたを相手にする気はありません。あとで涙を流して袖を濡らすといけませんから。
この歌は「艶書合」(えんしょ合わせ)という恋の歌を競う会で披露された紀伊という女性の歌とのこと。
まず男性が歌を送り、それを女性が返すという形です。
男性は藤原俊忠。当時29歳。上記の歌、返した女性の紀伊は70歳だったそう。女性はいつまでも恋に生きる。
最初に男性の贈った歌は、
人知れぬ思ひありその浦風に波のよるこそ言いまほしけれ
(人知れずあなたに思いをかけているので、荒磯の浦を吹く風に波が寄るように、夜になったら言い寄りたいのです)という歌に返したのが上の歌。
それを文字通り、袖にしたベテランの女性。恋のラリーをしているような大人の返し。
日本の先達は恋にも遊びにもセンスがあったのですねえ。
学びたいことはまだまだありそうです。