モンテーニュbookstudy

世界を抱きしめる練習

宮下志朗さん「モンテーニュ」岩波新書を読みました。

フランス人なのですが小さいころにギリシア・ローマの古典を勉強させられたそうです。
たとえば、ソクラテスはどこの生まれかと聞かれて、アテネと言わずに世界だと答えていたとのこと。

ヨーロッパの人々の感覚なのでしょうか。かつて一緒に仕事をしていたベルギー王室ご用達のショコラティエ・ピエールさんはベルギーとは言わずに「ヨーロッパ人」と自らを表現していました。

モンテーニュは自分と異なる人々に「差異を認めて」「好意を抱いて」「彼らの立場に入り込んでいく」。人間すべてを同胞だと考えている。のです。

そうか。初めてわかりました。いつかヨーロッパからお客さまが来られた時、欧州での生活が長かった方は、初対面ですが、抱擁をしていました。ごく普通な振る舞いで。私はそのあと、なにもできずにただ握手するだけでした。

これが抱擁なのか。挨拶だけの意味ではないんですね。相手を心から受け入れる姿勢を示す。

16世紀のモンテーニュがやっと教えてくれました。「世界市民」として共生を願っていたのですね。彼は「人間は誰でも人間としての存在の完全な形を備えている」という言葉からもわかります。

自分にもその気持ちをもって会う人すべてに接したいですね。お相手からもかえってくるから。
いつしか本当の抱擁ができますように。