「新古今和歌集」角川ソフィア文庫。ドナルド・キーンさんの「日本人の美意識」で触れていた藤原定家さんの歌が素敵で読みました。
見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ 巻第四 秋歌上
秋の夕暮れ。海の近くに漁師の小屋があるだけ。と言っておきながら、花と紅葉という鮮やかなカラーを最初に印象付けてグレーの世界へ引っ張る。この対照はどんなセンスなのでしょう。
風景を目の前にあるものだけでなく記憶を持ち出す。そのたとえの残像に私たちはどこまでも惹かれるのですね。
内容を少しご紹介しますと、この情景は「源氏物語」からきているとのこと。定家はその世界を自分なりに表現したとのこと。「源氏物語」は1000年ごろ。定家は1162年~1241年ですので、「古典」として読んでいたのでしょう。
古典はつながれて読まれているのですね。感動も同じですね。日本人で良かったと思える31文字に出会えました。